私の幸せな身籠り結婚


そう言って茉吏様はお上品に笑った。


「恐縮な限りです……」


七海はそう言ってもう一度深く頭を下げた後、真っ直ぐに氷織夫婦を見つめた。その目はあの見合いの日に見た一点の曇もない綺麗な颯霞の瞳と酷似していた。


その内側から溢れ出ている淑女(しゅくじょ)としての自信。その自信は傲慢さを通り越して、もはや心地良くも思えてくる。


自信はこの時代を生きる人間にとって最強の武器だ。時に美しく、しなやかで、危険が迫るとその隠していた牙を剝く。なんて恐ろしいものなのだろう。


「婚約式に挙式、結婚式にとこれから色々と大変だろうが颯霞がきっと七海さんを手助けしてくれると思うから安心しなさい」


耳に心地よく響く縁壱様の低い声。私はそれに笑顔を浮かべて上品さを纏った仕草で頷いた。


「はい。そうおっしゃっていただけてすごく安心しましたわ」


私はそう言って、一輪の薔薇が咲いたようにふわっと可憐に笑った。

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