私の幸せな身籠り結婚


自分が祖国の反逆者となろうとも、今はそんなことなどどうでも良かった。


私は颯霞さんの重すぎる愛に深く深く溺れていって、やがて息も出来ないくらい苦しい愛に、愛おしさを覚えてしまうのだろう。


「颯霞、さん……っ。私は、貴方のことを深く、深く愛しております……っ、」


いつか、この恋は終わってしまうかもしれない。自分の全てを捧げてもいいと思えた男性(ひと)()てられてしまうかもしれない。


それでも、今だけは……。熱なんていう理由には逃げないで、堂々と颯霞さんと繋がっていたいと思った。


────ごめんなさい。


私の“本当”の、お父様とお母様───……。


貴方方(あなたがた)は私のことを憎んでいらっしゃるのかもしれない。それかもう、私のことなど忘れてしまっているのかもしれない。


小さい頃に両親と離れ離れになった私も、二人の顔に深い霧がかかってしまったようにしてうろ覚えだ。私の新しい両親は、本当に冷たくて、酷い人たちでした。


幼い頃の記憶が殆どないままこの国に連れてこられた私は、義父(ぎふ)が本当の父親であると洗脳されてしまっていたのです。


父が本当の父親でないと知ったのは、私が十六の時でした───。

< 75 / 143 >

この作品をシェア

pagetop