私の幸せな身籠り結婚


それでも、誰もが慕っていた隣国の皇子がエマの国を訪れた時、エマの両親は涙を流しながら喜んでいました。

土地は枯れ、住民は餓死寸前だった七海の国は、今にも破滅の危機に迫られていたからです。


そんな中、その国を助けようと隣国から使いがやって来ました。その行使たちの中には、ヴィラン皇子もいました。


エマの姿を一目見た皇子は、その瞬間にエマの美しすぎるその容姿に目を奪われていたといいます───。


『なんという、美しい皇女なのでしょう……』


皇子は当時八歳で、エマとは結構な歳の差があったがそれでも厭わないほど一瞬にして美しすぎる容姿をしたエマに惚れ込んでしまったそうなのです。


そのことが、エマが本当の両親の元から、愛する祖国から、離れなければならなくなった、最大の出来事──元凶──になってしまうということも知らずに……。


『エマ姫様、お湯加減はいかがですか?』

『ん〜、凄くあったかくて丁度良いよ!』


小さい頃の私は、本当に何も知らなかった。時にこんなにも幼い少年の純愛が、一人の少女をここまで辛く追い込んでしまうことになろうとは───。


無知だった、無能だった、あの頃の私。だけど、本当は誰も悪くなんかない。ヴィラン皇子にお湯で背中を流してもらいながら、あの頃の私は一体何を思っていたのだろう……。

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