そして消えゆく君の声
(……高校生が入っていい店なのかな、ここ)


 鼓膜を引っかく聞き慣れない音楽に身をすくませながら足を進めて、一番奥の席、警戒色めいた赤いライトに照らされるテーブルをのぞき込む。


 最初に薄い氷のような質感のグラスが目に入って、次に、壁の影がゆっくりと動いた。


「こんにちは、日原さん」


 縁の太い眼鏡をかけた顔がこちらを見て、同時に、手首のくすんだ銀色のアクセサリーに光が反射する。


「道、迷わなかった?」

「い……いえ」

「ごめんね、急にこんなトコに呼び出して。怖かったでしょ?」

「そんなことは…」
 

 軽い口調もラフな服装も見覚えがない。

 けれど、レンズごしに見える整った顔立ちは間違いなく「黒崎要さん」だった。
 
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