そして消えゆく君の声

ずっと、あなたが

 その日は唐突にやってきた。



 文化祭の近付く10月。

 例によって先生の言いつけで居残りしていた私は、頼まれた机の移動を終えて薄暗い廊下を歩いていた。

 ラッシュ時をすぎた校内はひっそり静まり返っているけれど、規則正しく並ぶ部室の窓にはすべて明かりがついていて。


(遅くまですごいなあ)


 きっと、それぞれの部が文化祭に向けて頑張っているんだろう。

 家のこともしなきゃいけないし、と入らなかった部活だけど、みんなで力を合わせているところを見るとああ、いいな。なんて思ってしまう。


 普段は友達の部に顔を出すこともあったけど、この時期になると、さすがに部外者は邪魔できない。速足で廊下を通り抜けて昇降口に降りると、強い雨音が聞こえてきた。


 終礼の時には小雨だった空はいつの間にか厚い雲におおわれて、あたりを灰色っぽく包んでいる。

 泥混じりの足跡が残る石畳と、あちこちに立てられた色とりどりの傘。周囲は雨に閉じ込められたみたいに静かで。
 
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