そして消えゆく君の声
「あたしは黒崎のことなんてわかんなくていいよ」

「あはは、それもそっか」

「確かに全然しゃべんない奴だけどさ、どうせ大したコトなんて考えてないでしょ。大体、なーんも話さない時点で理解される気なんてないんだって」


 それきり、話題はもとのテストへと戻ってしまったけど、私の頭の中には角居ちゃんの言葉がいつまでもこびりついていた。


 雪乃も、角居ちゃんも、黒崎くんのことを知らない。黒崎くんが隠しているから。


 それは人に言えない事情だけでなく、黒崎くんの内面、黒崎くんの本音はいつも真っ黒なカーテンでさえぎられていて、少しの光も通さない。

 何もかもどうでもいいっていう態度で、無関心をはりつけて。

 理解される気がないって言うのも、一理ある。


 でも。本当に何もかもに無関心なのだったら、私に踏み込む余地なんてなかったと思う。


 どれだけ突っぱねられても近寄ることを止めなかったのは私だけど、最後の鍵をくれたのは黒崎くんだった。

 それとも、追いはらうことが面倒くさくなっただけなんだろうか。
 
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