そして消えゆく君の声

昔話

 長く苦しかったテストも終えて、クリスマス会当日。

 橋口くんの親戚がやっているというそのお店は、通りに面した細長いビルの地下にあった。


 隠れ家みたいな階段を下りて木製の扉を開くと、最初に目に入るのは魔法のランプめいた吊り照明。

 ごつごつした壁には、外国の写真が無造作に貼られている。


「ひーちゃん、こっちだよ」


 角居ちゃんの声に名前を呼ばれて、私は急いで奥の席へと向かった。

 多分、私で最後の参加者だ。

 急に家に親戚がくることになって、料理の手伝いをさせられていたらすっかり遅くなってしまった。


「遅くなってごめん」

「大丈夫大丈夫、他にも遅れた奴いたから」

「雪ちゃんも10分遅れだったしね」

「あれはしょうがないんだって、バスが全っ然進まなくて」


 連絡は入れていたけど気をつかってくれたのか、私たちのテーブルの料理にはあまり手がつけられていない。


 本当ごめんね、と謝りながら見回した店内に、黒崎くんの顔はなかった。
 
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