そして消えゆく君の声

「……お前」


 黒崎くんが、薄い唇を震わせた。

 急激に張りつめた空気は、そのまま凍てついてしまいそうだった。

 ついに踏み込んでしまったという緊張に、息苦しささえ覚える。それでも、私は決して目をそらさなかった。


「このクソ寒い中、喧嘩売りにきたのか」

「違うよ。私、黒崎くんと話がしたかった。会って、本当の気持ちを聞きたかった」

「こっちには話すことなんて何もない」


 乱暴に手を振り払って、踵を返そうとする背中を追いかける。

 進路をふさぐように前に回り込むと、露骨な舌打ちが上がった。


「どけ」

「黙っててごめん。私、要さんに会ったの。黒崎くんに隠れて」

「は……?」


 乾いた唇が、半開きのまま止まる。疑問を挟まれる前に、私は早口で続けた。
 
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