そして消えゆく君の声
 私が斎場の最寄り駅で降りたとき、駅前から続く細い道は、制服を着た後ろ姿で埋めつくされていた。


 男子も女子も、中等部生も高等部生も、受験真っ只中の最上級生までもが、みんな一様にうつむいて、途切れない列をつくっている。

 もつれながら一歩一歩あるく足。

 白いハンカチに顔を押し付けた女の子。


 かすれた、せつないすすり泣きを聞きながら最後尾に並ぶと自分が深い悲しみの渦の一部になったようで、私は歯を食いしばって、ゆっくりゆっくり足を運んだ。


 そうしないと、今にも座り込んでしまいそうだったから。


(……これ)


 道路脇の水たまりは、沼のように黒い。


(これ、現実なんだ)


 深い

 暗い

 哀切の底。
 
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