そして消えゆく君の声

挿話 親子

 何の用ってご挨拶だな、せっかく親子水入らずの時間を過ごそうとしているのに。

 はいはい、話が終われば帰りますよ。実は最近調べていたことがあってさ、お父様の意見を仰ぎたくて。

 え?
 もっとはっきり話せって?

 はは、悪いね。癖みたいなもんだから気にしないでよ。



 じゃあ単刀直入に。幸記の父親はあんたで、征一は気付いていたんだろ? 



 ……今の顔は見ものだったな。
 
 少し前に叔母さんが住んでいたところに行ってさ、覚えてる人間がいないか訊いて回ったんだよ。そんな都合よく見つかるわけないから何度も足を運ぶ羽目になったけど、いくつか目ぼしい話もあった。

 一緒になれない相手から逃げてきたとか、息子は父親似で、園芸好きも父親譲りだとか。今そこの本棚、図鑑を見たな。気をつけなよ、別に俺だって確信があったわけじゃないのに、勝手にネタばらしされても興醒めだ。


 腹違いの妹だっけか。こんな「間違ったこと」はないよな。いくら離れて育ったといえ、まさかあんたがね。

 
< 387 / 401 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop