そして消えゆく君の声

泣く少年

 その日も雨は降り続いていた。


 六月に入ってから、お日様を見たのはほんの数回。

 梅雨時なんだからしょうがないけれど、なかなかカラッとしない洗濯物を見るたびに、憂鬱がつのっていく。


(たまには止んでくれないかなあ)


 人でにぎわう夕暮れの商店街を歩きながら、私は肩を濡らす雨にため息をついた。

 うちは両親が仕事で忙しいから、時々私が学校帰りにスーパーへ寄って、夕飯やお弁当用のおかずを作ることがある。

 今の時期は二人とも帰りが遅くて、食材用の財布は私が預かりっぱなし。そうなると自然と安売りやタイムセールを気にする機会が増えて……

 ……と書くとなんだから生活感にあふれすぎているけれど、帰り道を歩きながら献立を考える時間は嫌いじゃなかった。


 とはいえ、雨のなか寄り道をするのはちょっと面倒くさい。

 
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