そして消えゆく君の声
 最近知ったのは、黒崎くんがとても物知りなこと。

 雑学っていうのかな、必要以上には話さないけど私の知らないことをいっぱい知っていて。なのに、そのことを褒めるとそっぽを向くのがおかしかった。


 この前読んでいたのは……神経学? 心理学?とにかく、そういう感じの本だった。

 いつも他人なんてどうでも良さそうに振る舞っているけど、本当は関心があるのかもしれない。


 楽しい想像を巡らせながら角を曲がって家へと続く川沿いの道を歩く。

 雨に濡れてしっとりした頭に浮かんだのは、昨日言われた雪乃の言葉だった。


『桂、なんか最近機嫌いいよね』

『そうかな、普通だと思うけど』

『嘘ばっかり、後ろから見てもふわふわしたオーラ出てるのわかるし』

『ふわふわ……』

『もしかして、好きな人できた?』


 探るような目を思い出して、私は思わず首を振った。


(か、考えすぎ。絶対考えすぎっ)


 雪乃いわく、最近の私はやたら幸せそうで、そわそわしてて、率直に言うなら恋する女の子の顔をしている、らしい。

 雪乃以外の友だちにも、

『桂彼氏できた?』

 って聞かれたから、よっぽど顔に出ているんだろうけど。


(恋とか私のキャラじゃないし、ましてや彼氏なんて、ないない)
 
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