そして消えゆく君の声
 ……沈黙。

 電話の向こうからは物音ひとつせず、ただ空白の時間だけが流れていく。


五秒……

十秒……


 積み重なる無言の時間がいたたまれなくて、私はもう一度、今度はちょっと弱弱しい声で呼びかけた。


「あの、黒崎くん…?」


 それでも返事はない。

 電波の調子が悪いのかな。
 ……ホッとしたような、残念なような。


「ごめん、聞こえないみたいだから一回切るね」


 向こうからは見えないと分かっているのに頭を下げて、曖昧な気持ちを抱えながら通話口から顔を離そうとした時。



「あんたが、日原さん?」



 耳に入った声は、黒崎くんのものじゃなかった。
 
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