君にありがとう【真人】





 心臓がバクバクと動いて、耳も熱い。

 詩ちゃんも、顔をりんご飴のように真っ赤にしている。

 しばらく、お互いの間に沈黙が走る。



「あ、あの!」



 先に沈黙を破ったのは、詩ちゃんの方だった。

 ちょっと申し訳ない。

 キスしたこと、謝ろう……。



「ご、ごめんね。詩ちゃ……」



 僕の言葉は、途中でかき消された。

 それもそのはず。

 僕の口は、彼女によって塞がれたのだから。

 驚きすぎて、頭が真っ白。体も動かない。

 離れても、まだ物事が整理されておらず、なにがなんだか分かっていない。



「う、詩ちゃ……」

「あたしは!」



 またもや詩ちゃんに言葉をかき消された。




< 12 / 14 >

この作品をシェア

pagetop