契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
「なるほど、確か三葉商事の社員さんだったかな?」
里村が楓に向かって笑いかける。そして和樹に向かって口を開いた。
「なら君から聞こう。彼女の好きなところは、どこだ? ん? 経営者が社員に手を出すなど、あまり関心できることではないが、その君らしくない振る舞いをさせたのは、彼女のどんなところに惹かれたからだ。一生独身でいいじゃないかと言っていたのをくつがえした決めてはなんだ?」
矛先が和樹に向き、矢継ぎ早に質問が飛ぶ。彼は一瞬瞬きをして、遠慮がちに楓を見る。
楓の胸がドキンとした。ありもしない楓の魅力と、ふたりの間の愛情を彼は言えと言われている。
いったいどう答えるのだろう?
「そうですね……」
掠れた声で言いかけて、そのままゴホゴホと咳き込んだ。
里村がはははと豪快に笑い、彼の背中をバシバシと叩いた。
「こんなお前ははじめてだ。真っ赤になっとるじゃないか! 本当に奥さんのことが好きなんだなぁ」
「おじさんが、いきなり変なこと聞くからですよ。こんなところで」
答える彼は、プライベートの呼び方になり、口調も砕けた。
「ははは、今日のところは許しでやろう。そんなお前を見られただけで満足だ。馴れ初めは今度ゆっくり聞かせてもらおう」
里村が楓に笑いかけた。
「はい、ぜひ」
楓が微笑んで答えると、彼は頷いて去っていった。
楓はホッと息を吐いた。ありもしない愛情を答えられなかった和樹を、里村がポジティブに解釈してくれたのは助かった。
「ごめん、本当に父親みたいな人なんだ。小さい頃はよく一緒にキャンプにつれていってくれたりした。だから遠慮がなくて……」
和樹が楓の耳に唇を寄せて囁いた。
「だ、大丈夫です……」
「それより、楓。本当に大丈夫か?」
楓の顔を覗き込んで和樹が言う。その彼の気遣いに、傷ついてしまう自分が嫌だった。
仲のいい夫婦のフリは、契約を達成するのに必要で、彼はなにも間違えてはいない。それなのに、勝手に傷ついている。彼を愛してしまったから、偽りの愛がつらいのだ。
「大丈夫です。でも……少しお手洗いに行ってきてもいいですか?」
楓は尋ねる。逃げるつもりはないけれど、一旦気持ちを切り替える時間が欲しかった。
「ああ、もちろん。少し休憩をしておいで」
和樹が頷いたのを確認して、楓がそっと会場を出る。
黒柳がついてきた。
「奥さま、私がご案内いたします」
彼女の口から出た『奥さま』という冷たい響きに、楓は一瞬躊躇する。
できればひとりで行きたかった。
気持ちを切り替えたいのに、彼女がいたらうまくいかないように思ったからだ。
でもすぐに考えなおして諦める。彼女は仕事でここにいる。個人的な感情は抜きにするべきだ。
「じゃあお願いします」
廊下を楓は黒柳と共に歩き出した。
里村が楓に向かって笑いかける。そして和樹に向かって口を開いた。
「なら君から聞こう。彼女の好きなところは、どこだ? ん? 経営者が社員に手を出すなど、あまり関心できることではないが、その君らしくない振る舞いをさせたのは、彼女のどんなところに惹かれたからだ。一生独身でいいじゃないかと言っていたのをくつがえした決めてはなんだ?」
矛先が和樹に向き、矢継ぎ早に質問が飛ぶ。彼は一瞬瞬きをして、遠慮がちに楓を見る。
楓の胸がドキンとした。ありもしない楓の魅力と、ふたりの間の愛情を彼は言えと言われている。
いったいどう答えるのだろう?
「そうですね……」
掠れた声で言いかけて、そのままゴホゴホと咳き込んだ。
里村がはははと豪快に笑い、彼の背中をバシバシと叩いた。
「こんなお前ははじめてだ。真っ赤になっとるじゃないか! 本当に奥さんのことが好きなんだなぁ」
「おじさんが、いきなり変なこと聞くからですよ。こんなところで」
答える彼は、プライベートの呼び方になり、口調も砕けた。
「ははは、今日のところは許しでやろう。そんなお前を見られただけで満足だ。馴れ初めは今度ゆっくり聞かせてもらおう」
里村が楓に笑いかけた。
「はい、ぜひ」
楓が微笑んで答えると、彼は頷いて去っていった。
楓はホッと息を吐いた。ありもしない愛情を答えられなかった和樹を、里村がポジティブに解釈してくれたのは助かった。
「ごめん、本当に父親みたいな人なんだ。小さい頃はよく一緒にキャンプにつれていってくれたりした。だから遠慮がなくて……」
和樹が楓の耳に唇を寄せて囁いた。
「だ、大丈夫です……」
「それより、楓。本当に大丈夫か?」
楓の顔を覗き込んで和樹が言う。その彼の気遣いに、傷ついてしまう自分が嫌だった。
仲のいい夫婦のフリは、契約を達成するのに必要で、彼はなにも間違えてはいない。それなのに、勝手に傷ついている。彼を愛してしまったから、偽りの愛がつらいのだ。
「大丈夫です。でも……少しお手洗いに行ってきてもいいですか?」
楓は尋ねる。逃げるつもりはないけれど、一旦気持ちを切り替える時間が欲しかった。
「ああ、もちろん。少し休憩をしておいで」
和樹が頷いたのを確認して、楓がそっと会場を出る。
黒柳がついてきた。
「奥さま、私がご案内いたします」
彼女の口から出た『奥さま』という冷たい響きに、楓は一瞬躊躇する。
できればひとりで行きたかった。
気持ちを切り替えたいのに、彼女がいたらうまくいかないように思ったからだ。
でもすぐに考えなおして諦める。彼女は仕事でここにいる。個人的な感情は抜きにするべきだ。
「じゃあお願いします」
廊下を楓は黒柳と共に歩き出した。