契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
もう一度、はじめから
ホテルの高層階の一室で、午後の日差しに照らされた香港の摩天楼を背に、和樹はイギリス経済誌のインタビューを受けている。

『世襲という習慣が会社を衰退へと追いやるのを我々は何度も目にしてきました。三葉商船がそうならない、という自信はありますか?』

『確かに私には生まれという部分に大きなアドバンテージがあります。三葉家に生まれていなければ、今この場所にいなかったかもしれない。だが、三葉商船という巨大な船の船長となるべく血の滲むような努力し続けてきたことは自信を持って言い切れます。それからこれからも常にそうある覚悟がある。社員たちとは……』
 
今、三葉商船ではクイーンクローバー号の就航を機に、物流だけでなく旅客業への進出を大々的にアピールするため、メディアへのアピールを積極的に進めている。
 
この香港出張でも、初日に商談を二件成功させたあと夜に一件、今日は朝から取材を三件受けた。
 
目の前のインタビュアーが尋ねた。

『ミスターカズキ、以前あなたは本当は船員になりたかったと話していましたね。同じ海運会社にいるとはいえ、今のあなたは随分違う分野だ。そのギャップにフラストレーションを感じたりはしませんか?』

和樹は笑みを浮かべて口を開いた。

『私は、三葉商船という巨大な船の船乗りです。いずれは船長になる。船が安全に素晴らしい航海を続けられるよう導いていくつもりです。フラストレーションどころか、非常に胸を高鳴らせているところです。もちろん海は気まぐれですから、荒れることもあるでしょう。ですがこの先なにがあろうとも、私は決して船を降りないと胸に誓っているのです』
 
そう締めくくると、インタビュアーがにっこり笑って立ち上がる。和樹に向かって右手を差し出した。

『これからの三葉商船の展開を楽しみにしています。今日はありがとうございました』

『こちらこそ』
 
がっちりと握手を交わしてインタビューが終了する。
と同時にインタビュアーが、砕けた口調で口を開いた。

『カズキ、もうすっかり三葉商船の顔だ』
 
彼は和樹がイギリス留学時代の友人でもあるのだ。

『いや、まだまだこれからだよ。オリバー』

『それにしても、先日のパーティに出席できなかったのは残念だ。クイーンクローバー号の評判はあっちこっちから聞くよ』
 
彼はパーティへ出席予定だったのだが、家族の都合で急遽欠席になったのだ。

『モテるくせに絶対に結婚はしない鉄壁の男と言われた君をついに陥落させた奥さまに会いたかったんだが』
 
オリバーが残念そうにする。

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