契約妻失格と言った俺様御曹司の溺愛が溢れて満たされました【憧れシンデレラシリーズ】
この半年で楓の中の夫婦ついての考え方は少し変化していた。

前時代的で女性に理不尽だと感じていた両親の夫婦関係を否定する気持ちは薄れている。

思い返してみれば、母自身の口から父や家のことについての愚痴を聞いたことはない。ふたりは自分たちの価値観で娘の幸せを願っていたのだろう。
 
嫁に出した娘のことに口出しするべきではないと思っているのか、今は以前より態度が柔らかくなった。

もちろん『ちゃんと和樹さんのために家のことをやってるか?』というメッセージは来るが、基本的には、婚家のことに口を出すべきではないと思っているのだろう。

とはいえ、田舎流の娘へ気遣いは続いていて……。

「和樹さんが食べないなら冷凍だな」
 
呟くと和樹が首を傾げて楓を見た。

「今日はカレーにしようと思ってたんです。実家から、じゃがいもが大量に届いちゃって。こんなにたくさんは食べられないっていつも言ってるんですけど、毎年ダンボールで送ってくるんです。近所にお裾分けしなさいとか言って……」
 
東京とそっちは事情が違うといくら言ってもダメなのだ。

だからこの時期は楓はじゃがいも料理ばかり作ることになる。
 
楓の説明に、和樹が難しい表情になる。

「カレーか……、そうか。カレー……」
 
なにやらぶつぶつと呟いている。

「和樹さん?」
 
楓が首を傾げると、彼は真剣な表情で口を開いた。

「……カレーなら食べたい。いや本当は楓の手料理は全部食べたいんだが、カレーは特に食べたいんだ。やっぱり、遅くなっても夕食は家で食べることにするよ。冷凍はしないで置いておいてくれ」

「え⁉︎」
 
楓は目を丸くした。

「そ、そんなに……? でもそれならカレーは明日にしましょうか?」
 
じゃがいもを使った料理はほかにもあるのだから、どうしても食べたいというならば、食べられる日にずらせばいいだけだ。でもその提案に和樹は首を横に振った。

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