生まれ変わりの聖女は子供でも最強です!〜死にたがりの元婚約者を立ち直らせたらまた恋が始まりました〜

47.これが終われば

「美味しいっっ!」
「そうだろう。リリアは甘い物が好きだから気に入ると思った」

 あの騒動から数日がたった日。

 私はルーカスの執務室でケーキをご馳走になっていた。

 いちごがいっぱい乗ったクリームたっぷりのショートケーキ。

 あまりにも美味しくてほっぺたが落ちそう。

「リリア、ついてる」

 ルーカスはくすりと笑みを浮かべて、自身の口元を指さして示してくれた。

「う……」

 つい美味しくてケーキを頬張ってしまった。

 口元を手で探るも、付いたであろうクリームにたどり着かない。

「?」

 疑問に思っていると、いつの間にか正面にいたはずのルーカスが隣に距離を詰めていた。

「ごめん、嘘」

 楽しそうに笑うルーカスは私の顔を覗き込むと、私口元を指先で拭った。

「う、嘘なのに、何で…」

 その行動に思わず赤面してしまう。

 クリームが付いていないなら、今のは何だったんだろう。

「ごめん、ごめん」

 ルーカスは優しく微笑みながら謝ると、私の目をジッと見た。

 その視線は外されないまま、先程私の唇を拭った指先に、キスをした。

「なっ!!!!」

 その色っぽい視線と仕草にドギマギしてしまう。

「キスしたいなー、と思ったけど、我慢した」

 ルーカスはそんなことをサラリと言うと、私の手を取り、自身の唇まで引き寄せた。

 形の整った唇は柔らかく、その熱が伝わってくる。

 私はドキドキしたまま、ルーカスから視線を外せずにいた。

「リリアもして?」

 彼はそう言うと、私の手を戻し、指先を唇まで近付けた。

 その意味に気付くと、また私の顔は赤くなる。

 期待と熱を込めたルーカスの表情に、私は従うしかなく、彼の唇に触れた指先にキスをした。

 それを見たルーカスは、言いようのない甘い表情で微笑んだ。と、同時に、私は彼に引き寄せられて、抱き締められた。

「ルーカス、甘い……」

 抱き締められた私はドキドキしながらもそう言うと、ルーカスは私の耳元で囁いた。

「久しぶりのリリアとの時間だ。大切にしたい」

 あの騒動から、ルーカスは忙しくしていた。

 関わった全ての人を摘発し、その処理に追われていた。

 その間、ルーカスと会えずにいた私は、研究室でひたすらポーション作りに勤しんでいた。

「でも、今日だって王都の結界の話で呼ばれたはずじゃ……」

 そう。第二王子派が解体されたことにより、私たちは最後である王都の結界にようやく手出し出来るのだ。

 今日はその話で呼ばれたはず。

 美味しいケーキを出されて、思わず浮かれてしまったけど、この部屋にはいつまでたっても私とルーカスの二人きりだ。

 疑問に思ってルーカスをちらりと見れば、彼はいたずらが見つかった子供のように笑った。

「ごめん。リリアとの時間が作りたくて、君には皆より早く来てもらったんだ」
「そうだったの……」

 まだルーカスの腕の中にいた私は、彼がそんなことを考えてくれていたことに嬉しくなった。

「……怒った?」

 上目遣いで私を伺うルーカス。

 ……ずるい!!

「怒るわけないじゃない!」

 私がそう言うと、ルーカスは口の端を上げて笑った。

「良かった」

 ルーカスは、私が怒るわけないとわかってて聞いたんだ。

「……意地悪……」

 私はルーカスに頬を膨らませていじけてみせた。

 そんな私をルーカスは、また抱き締めた。

「愛している」

 突然のルーカスの愛の告白に、胸が跳ね上がる。

「急にどうしたの?」

 私はルーカスをギュッと抱き締め返した。

「そう言えば、言ってなかったなと思って」
「そうだっけ」

 ルーカスには甘い言葉を沢山浴びせられてきた気がする。

 愛しているは、無いのか……うん。

「リリアは?」
「えっ?」

 そんなことを考えていると、いつの間にかルーカスの顔が至近距離にあった。

 真剣な瞳。

 その瞳には私も真剣に返さなくては。

「私もルーカスを愛しているよ」

 私の言葉に、ルーカスは安堵したような表情を見せた。そして。

「リリア………」

 ルーカスの顔が次第に近付いて来たので、私はギュッと目を瞑った。

 お互いの唇が重なると、私は幸福感に包まれた。

 継承や派閥問題も落ち着き、結界も残すは王都の大きな物一つだけ。

 ポーションの流通や治療院も好調。

 今世こそ上手くいっている。今度こそ、ルーカスと一緒に生きていける。

 そんな想いが一気に溢れて、幸せだなあ、と思った。

 コンコン

 まだお互いの唇が重なる中、部屋にはノックの音が響いた。

「ちっ、時間か」

 ルーカスはドアの方に目をやると、私を解放した。

 結界の修復について予め呼んでいたアレクたちが来たのだろう。

「リリア、これが終われば……」
「ルーカス?」

 何だか真剣な顔のルーカスは、何か言いたげだったのに、途中で言うのをやめてしまった。

「……キスの続きは全てが終わってからな」
「もう!」

 ルーカスは片目を瞑って、意地悪な顔で微笑んだ。

 いつものルーカスだ。

 さっき何か言いたげだったのが気になったけど、私は考えるのをやめてしまった。

 キスの余韻にドキドキしながらも、その幸せを反芻していた。
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