敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

「そうなの。その局で今度料理番組を配信することになったみたいでね、その番組に久世さん、出てみない?」
「えっ、私が!?」
「そう。料理人として。プロデューサーの方からどなたか適任者はいませんか?って相談されたときに、パッと思い浮かんだのが久世さんだったの。あなたなら腕もあるし、テレビ映えもすると思うの」
「やっ、私なんて全然」


首を激しく横に振る。インターネットとはいえ、いきなりテレビ出演の話を持ちかけられ動揺してしまう。


「全然ってなぁに? 久世さんの料理をもっといろんな人に見てもらいましょうよ。教室だと限られた生徒さんだけになるけど、ネット配信ならもっとたくさんの人に届けられるの。久世さんが楽しそうに教える姿、私、もう一度見たいな」
「楽しそうに教える姿……?」


江梨子の言葉を反復する。
料理人を目指したのは、自分の作った料理をおいしそうに食べる姿が見たかったから。

調理学校を卒業後、当初はレストランの厨房へ就職しようと考えていた。ところが、たまたま友人と一緒にグランビューレの職場見学に訪れたとき、生徒たちに教える講師たちのキラキラした姿を見て、教える立場という道もあると知った。
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