敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~
幸せな朝

プロポーズから半年後、聖は七緒と結婚式を挙げ、めでたく夫婦となった。

それをなによりも喜んだのは言うまでもなくふたりの祖父母、利幸と孝枝である。

七緒は父親を亡くしているため、バージンロードのエスコート役を担ったのは利幸だった。利幸は、まさか自分がそのような大役を任せられるとは想像もしていなかったらしく、終始ご満悦。貫録のある大病院の院長というよりは、目尻の下がった〝いいおじいちゃん〟だった。

利幸の了承をとり江梨子も出席。七緒には新しい母親ができたことになる。

ハネムーンから帰って二週間が経ち、生活も落ち着いてきた土曜日の午前七時。七緒よりひと足先に目覚めた聖は、コーヒーメーカーをセットしてから再びベッドにもぐり込んだ。

腕の中に抱き寄せた七緒から、彼女特有の甘い匂いがふわっと香る。それにつられて額に軽いキスをしたが、彼女はまだ目覚めない。

それもそうだろう。昨夜も遅くまでお互いを求め合って濃密な時間を過ごしたから。

長いまつ毛に艶やかな唇。聖が触れると途端に桜色に染まる色白の素肌は、絹のように美しい。ひとたび触ると手が吸い寄せられ、そこから離れがたくなる。

だから、何度も求めてお互いに果てを見たくなるのだ。
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