敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

急いでぺこりと頭を下げる七緒に、利幸が柔和な笑みを返す。


「今日はどこか具合でも悪いのかな?」


首を傾けて心配そうな目をした。


「私ではなく、祖母のお薬をいただきに来たんです」
「あぁ降圧剤だね」
「はい」


今日は診察の必要はなく、薬だけで済む日のため七緒でも事足りる。


「そうだ、昨日孝枝さんから聞いたんだが、七緒さんは今、仕事をされていないそうだね」
「……お恥ずかしながらそうです」


昨夜、七緒たちと別れてふたりで食事をしているときに話題になったのだろう。
大事な孫、それも次期院長の恋人が無職では相手として不十分だと言われるのではないかと身構える。

深窓の令嬢なら花嫁修業のための家事手伝いでも通用するが、一般家庭育ちの七緒ではそうはいかないだろう。二日目にして早々に恋人のふりは終わりかもしれない。
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