敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~

ストレッチャーに乗せられた患者がCTに送り出されるのと入れ違いで、脳神経外科の青山一弥(いちや)が処置室に入って来た。


「お疲れ」
「お疲れ。患者は?」


聖に返しながら一弥が処置室内を見回す。


「今、CTに向かった。脳血管障害の可能性もあるから、一弥の出番かもしれない」


一弥は大学時代の同級生であり、大学病院に残っていた彼を聖がこの病院へ引っ張った。

聖が心臓血管外科の中核なら、一弥は脳神経外科の中核。互いに切磋琢磨してきた仲間である。
一弥はやわらかな癖のある栗色の髪に甘いマスクをしており、聖とふたりでこの病院の人気を二分しているといっていいだろう。

彼の父親は製薬会社の社長だが、一弥は薬品で人を助ける道ではなく、自らの手で患者を助ける道へ進んだ。


「CT室へ向かおう」
「オッケー」


聖は一弥を伴って救急処置室を出た。
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