雨音

彼が去って間もない頃
彼は再び姿を現した。
さっき何故立ち去ったのだろう。

彼はいきなり雨に負けない
大きな声で言葉を発した。
『君…そこにいつから住んでるの?』
歌っている時の美しい声とは違って
少し緊張して声が裏返っているのが
分かった。
『2ヶ月前からです』
そういうと彼は少し顔を隠した。
『あの…よかったら!!
うちに入りますか?』
私は勇気を出して言ってみた。
『ありがとうございます』
そういうと彼は素直に
私の家に入った。

彼は不思議そうに私の部屋を見ながら
さっき私が彼を見ていた
小窓まで歩いていった
そこに座り、気が抜けたかのように
下唇をだしてどこかを眺めていた。
『あの…紅茶にしますか?それともコーヒーにしますか?』
『紅茶がいいな』
『はい』
なんとなく彼が
紅茶を選ぶ気がしていた。
少し嬉しくて
私の紅茶を入れた時の表情は
気持ち悪いほど、にやついていた。

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