狂愛メランコリー

「……わたしが死ぬと、殺される2日前にタイムリープするってこと?」

「ああ」

「そんなのありえるの? そんな、非現実的なこと────」

 混乱を禁じ得ないでいる中、向坂くんは冷静な様子で段差に腰を下ろす。

「いや、分かんねぇけど。そう考えた方が色々と納得できんじゃね?」

 予知夢ではなく、死に返るタイムリープ。

 理人に殺されたのは夢じゃなくて、わたしが実際にこの身で経験したこと。

 そう解釈すれば、今日抱いた違和感の数々に、確かに合点がいくかもしれない。

「殺されたんだ、本当に……」

 呟いた声は小さく掠れた。

 にわかには信じられない。
 この不可思議なタイムリープも、理人に殺されたという事実も。

(────でも、どうして?)

 どうして、()()理人がわたしを殺すんだろう。

 いつだって支えてくれた、 ずっと味方でいてくれた、優しい理人がどうして?

「理由に心当たりねぇの?」

「……ない、分かんない」

 ふるふると首を左右に振った。

 “殺す”なんて、どう考えても普通じゃない。

 そんな最悪の選択をさせるようなきっかけを、わたしが与えてしまったのだろうか。

「……まあ、とりあえずいまは教室戻れ。三澄に怪しまれるかもしんねぇし」

 そうしたら、死を早めることになるかもしれない。
 戸惑いと動揺をどうにか抑え込み、こくりと頷いた。

「昼休みにまた来るね」

「来れんの? あいつは?」

「理人は今日、クラス委員の集まりがあるから」

 “前回”の彼は確かにそう言っていた。
 時間が巻き戻ったのなら、今回だって同じはず。

 向坂くんと別れると、足早に教室へ戻った。

 彼がわたしの話を全面的に信じてくれたのかどうかは分からない。

 どれほど真剣に受け止め、考えてくれたのかも分からない。

 それでも、いまのわたしが頼れるのは向坂くんしかいない。
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