壁にキスはしないでください! 〜忍の恋は甘苦い香りから〜

***


報告を終え、休み時間に葉緩はのんびりと廊下に出て窓から入り込む風を浴びていた。


「あ、そうだ。 徳山さん、せっかくだしこれ、どうかな?」

「わぁ!」



桐哉と柚姫の会話が耳に入り、壁に張り付いて耳を大きくして聞き入っている。


「うん、すごくいいと思う! これにこれを足して……」

「さすがは徳山さん。女の子の鏡だね」

「やだもぅ、恥ずかしいよ……」



(きましたきましたー! 主様と姫のイチャイチャがはじまった! これは距離を取るべし!)


周りに誰もいないことを確認し、葉緩は廊下の壁に擬態する。

教室の窓が開いているため、二人の様子を見ながら会話を楽しむにはベストポジションであった。



(ふへへへ、周りにバレずに壁に擬態するなど慣れたものよ)


布を握りながらニタリとする葉緩。

すると鼻を唯一無二の匂いがかすめていった。



(ん、この匂いは……!)


気づいた時には既に遅い。

しっかりと葉緩は葵斗によって壁との間に挟まれていた。

匂いが分かるようになっても、気配のない葵斗は隙がない。

匂い慣れしていないこともあり、葉緩はすっかり油断していたのであった。



「早く匂いに慣れてね? あ、でもやっぱりいいや」

「あ、葵斗くん?」


「不意打ちも楽しいからね」



ーーチュッ。


唇が布越しに触れた。

目元だけ布から出し、藤の瞳に葵斗を映し込む。

顔はあまりに真っ赤で、リンゴのように熟していた。


「だ、だから私は今! 壁なのです!」


そんな言い訳はまったく通じない。

ニコニコと迫ってくる葵斗に葉緩は燃えながら叫ぶのであった。



「壁にキスはしないでくださーい!!!!」





【壁にキスはしないでください!〜忍の恋は甘苦い香りから〜】


卍〜恋路の章〜卍 【幕】
< 114 / 114 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

令嬢ヴィタの魂に甘い誘惑を

総文字数/20,396

ファンタジー33ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
その存在、甘く誘惑するもの。 古から続く執着愛に、気高き魂は引きずり込まれる。 《この背徳の沼からは逃げられない》 ※この物語には2つの結末があります。 片方だけでも、両方でも、お好みでお楽しみください。 「ハッピー」or「メリーバッド」?
表紙を見る 表紙を閉じる
【旦那様を溺愛していいのは私だけです!】 アイスノ王国第一王女・ルーナは「戦争の英雄・リアム」のもとに嫁ぐことになる。 だがリアムは人々から魔獣として恐れられる「フェンリル」だった。 ルーナはリアムに惚れ込み、愛をむき出しに新婚ライフがはじまった。 リアムと婚姻の契りを交わすも、本音とウソに翻弄され、迷いが出てしまい――。 愛されたいけど、愛したい! 欲張り王女様と生真面目なフェンリルの新婚生活&愛は勝ち取る勢いの物語。
サソリは聖女見習いの激愛に猛毒を刺す【一話だけ】

総文字数/12,830

ファンタジー18ページ

第6回ベリーズカフェファンタジー小説大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
プレアデス国、聖女見習いのメメリア。 王女であり聖女でもある、大好きなセリア様の側近として仕えてます! 隣国のヒュアデス王国からセリアとの婚姻話が持ち上がるも、セリアは悲しみに暮れる。 お相手のネリウス王子は「悪評判」につきるお騒がせ王子だからだ。 セリアの悲しみを癒すため、メメリアはヒュアデス王国に侍女として潜入。 ネリウス王子の実態を確かめに向かうが……? そこで出会った一等星。 アンタレス星に猛毒を刺されて恋をする。 利害は一致。 ネリウス王子の更生計画がはじまります!? 同時にメメリアの恋物語が勢いよくスタートしました!! ※本作はベリーズカフェファンタジー小説大賞「1話だけ部門」応募作です。 ※表紙イラストは自作イラストを一部AI修正しています。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop