星空の下で愛を♦年下看護師の彼は彼女に一途な愛情を注ぐ♦
高校生の頃、星七自身お母さんとの思い出はあまりいい思い出ではないと話してくれたことがある。
大学受験を控えていて、大変な時期でご両親の支えが必要であったときに、1人だったと……。

それでも星七が今こうしてお母さんに寄り添うのは、心のどこかで会いたいと思っていたからだと思う。


「星七から聞いたでしょう? 私たちの過去のこと」

「はい、まぁ……少しだけ」

「あのときね、私だけ旧姓に戻して星七はそのまま。 高校生だとね、周りの目もあるだろうし、あの子だけ〝井筒〟なの」


お母さんはそう言いながら、近くに置いてある吸い飲み器でお茶を一口飲む。

……その話は、初耳だった。
確かに、星七の苗字とお母さんの苗字は異なっている。

でも、それが年頃の女子高校生だった星七のためだということは、きっと本人は知らない。
そんな理由があったとは。


「あのときは迷ったけど……結局〝井筒〟のままでよかった。 私はもう、長くないし」


少し潤んだ瞳で、星七お母さんはそう言った。
星七は過去のことを語ったとき、まるで『私は愛されていなかったの』と言いたげだった。

でも、そんなことは一切ない。

星七と離れてしまってもなお、星七のことを1番に考えてくれている。
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