シンデレラは王子様と離婚することになりました。

消えたシンデレラ

「社長、見つけました。捺美さんが失踪する日、タクシー乗り場で捺美さんに話し掛けている人物が防犯カメラに映っていました」

 社長室でデスクに座って仕事をしていると、高城がそう言って入ってきた。

「タクシー乗り場? 仕事帰りか?」

「はい。捺美さんの義理の母親と姉はマークされていたので社内に入れませんでしたが、お父様はノーマークでした。それに、スーツ姿だったので、取引先の社員と思われたのか周囲に溶け込んでおり、報告にも上がってきていませんでした」

 会社には毎日、たくさんの取引先が出入りしている。私服女性は目立つが、スーツ姿の中年男性だと溶け込んでしまう。

「やはり、父親がトリガーだったか」

「そのようですね。二人は少し会話をしたあと、一緒にタクシーに乗っています」

 そして、捺美は実家に戻った。実家から出たいとあんなに願っていたにも関わらず。実の親子とのも絆はそれほど深いということか。

いや、絆というより、呪縛か。
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