シンデレラは王子様と離婚することになりました。
 人生を切り取った写真の一つに、一人の男の子が映し出されていた。

色白で女の子みたいに整った顔をしている。

目付きが鋭く、理知的で、世の中全てを恨んでいるような瞳の色だ。

(そういえばこの男の子、口も悪いし態度も大きくて生意気だった。でも、笑顔が優しい〝お兄さん〟だった……)

 どうして最期に思い出すのがこの男の子なんだろう、とゆっくりと崖から落ちながら思った。

意外と冷静だった。あっさり死ねればいいなと願う。

 すると、腕に大きな衝撃を感じた。がしりと手を掴まれた。

身体は崖から落ちて宙ぶらりんの状態で、手を掴まれているからギリギリ落ちずにいられている。

「くっ!」

 私を助けてくれた男の人が顔を歪ませながら、必死で持ち上げようとしている。

 その人は、私が知っている人だった。さっき思い出した男の子……。

「大翔……」

 私が驚きながら言うと、大翔は額に汗の粒を吹き出しながら、ニヤリと笑った。

「捺美、助けにきたぞ」
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