ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい
2曲目「スマホ越しの子守唄」
(……本当に、いいんだよね?)
部屋のベッドに腰掛け、私は先ほどからずっとスマホを睨みつけている。
画面には先ほど交換した羽倉くんの連絡先が表示されている。
現時刻は23時59分。隣の部屋ではお母さんと弟たちがぐっすりと寝ている。
バイトから帰宅して、いつものように軽く夜食を食べてお風呂に入っていたらこの時間で。
(でも、何時でもいいって言ってたし……)
と、そのときスマホの時計が『00:00』に切り替わった。
(よし!)
私は思い切って通話ボタンをタップしスマホを耳に当てた。
呼び出し音と自分の心臓の音が重なって聞こえる。
――でも。
(出ない……)
私は画面の×ボタンをタップした。
そして溜息を吐く。
(なに勝手にドキドキしてるんだろ、私……)
でもその時、ブブブ……とスマホが振動した。
「!」
画面には確かに「羽倉」という名が表示されていて。
少し震える指で通話をタップし、スマホを耳に当てる。
『ごめん、風呂入ってた』
スマホ越しの、いつもとは少し違う低音にどきりとする。
なんとなくスマホを耳から離してしまう。