ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

5曲目「歌」


 ニ時間目が終わり、私は席を立った。
 男友達数人と談笑している妹尾くんに、思い切って声をかける。

「妹尾くん、ちょっといい?」
「え? なになに、りっかちゃん」

 妹尾くんは嬉しそうに私の元へ来てくれた。
 でも友人たちの興味津々の視線が気になり、私は小さな声で続ける。

「その、昼休みはやっぱりちょっと……今はダメかな?」

 昼休みは羽倉くんとの約束がある。
 だから、その前にと思ったのだ。

「あ~、うん、いいよ」
「ありがとう」

 妹尾くんはちょっと考えた後、頷いて廊下へと向かった。
 廊下で話すのかと思ったけれど、彼はどんどん廊下を進んでいく。
 そして辿り着いた先は。

「ここって……」
「うちの部室~」

 妹尾くんはその教室の鍵を開け、ガラリとドアを開けた。
 中には楽器や機材が色々と置いてあって私は目を見開く。

「妹尾くんて、軽音部なんだっけ」
「知らなかった?」
「う、うん……」
「そっかそっか~。りっかちゃん放課後はすぐに帰っちゃうもんね~」

 言いながら彼はスタスタと中に入っていき、慣れた様子で立てかけてあったエレキギターを肩にかけた。

「これが俺の相棒ね」

(へぇ~さすが、似合ってるなぁ)
< 26 / 113 >

この作品をシェア

pagetop