ヒミツの王子様は隠れ歌姫を独り占めしたい

7曲目「告白」


「――ちょ、ちょっと待って、羽倉くん……!」

 いつもの階段上で、私は真っ赤になって言う。

「なんで」
「ま、まだ、その、心の準備が出来てないっていうか……」
「俺はもう待てない」

 眼鏡を外した羽倉くんの良い顔が迫ってくる。

(ひえぇぇぇ~~!?)


 ――時は少し遡り。


「おはよう」
「え?」

 朝、通学路を歩いていると後ろから声を掛けられ驚く。

「羽倉くん!?」

 朝この道で会うなんて初めてだ。

(というか、こんなに早く会えるなんて思ってなかったし!)

 昨夜のことを思い出してドキドキしていると彼は私の隣に並んだ。

「ど、どうしたの?」
「早く、りっかに会いたくて」
「!」

 瞬時に、自分の顔が真っ赤になるのがわかった。
 でも他の生徒がちらちらとこちらを見ていることに気付いて肩を竦める。

「で、でも」
「迷惑だった?」
「そ、そんなことはないけど……」
「じゃあ、教室まで一緒に行こう」
「う、うん」

(あれ……? 昨日、羽倉くん照れてたよね……?)

 平然とした様子の彼をちらりと見上げる。

(というか、羽倉くんはみんなにバレてもいいのかな。――って、まだ別に付き合ってるわけじゃないけどね!)
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