憧れのCEOは一途女子を愛でる
§2.近い存在に
***

 あのあと社長とふたりで碁会所に戻ってみると、祖父と辰巳さんは私たちを見るなりニヤニヤと意味深な笑みを浮かべていて、最初から仕組まれていたのだと嫌でもわかってしまった。
 まるで不意打ちのお見合いみたいなものだ、と家に戻ってから不満を口にしてみたけれど、祖父は一向に取り合ってくれない。
 互いの孫同士を会わせてみたら、すでに社長と社員だったという思いもよらない接点があったことに、これもすべて“縁”だとふたりで大いに盛り上がっていたらしい。
 私はまだいいけれど、社長に迷惑がかかるのは心苦しい。


 祖父たちがこれ以上暴走しないようにと心の中で願い続けて十日が過ぎた。

「今度店舗に貼る予定の新しいポスターができたんですけど、見てみます?」

 仕事中に声をかけてきたのは、私より一年後輩にあたる女性社員の天野(あまの)さんだ。
 彼女とはデスクが隣なのだけれど、テキパキと的確に動いてくれるのでとても助かっている。

「うん、見せてほしい」

 我が社は商品アピールのために、真凛(まりん)という二十歳の女性モデルを起用している。
 顔がかわいいのはもちろんのこと、明るく元気いっぱいな印象がブランドイメージに合うという理由で彼女が選ばれているのだそうだ。

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