Cherry Blossoms〜あなたに想いの花束を〜
「そうだな。二人とも、緊張してしまっているのかな?」

安藤警視正がニコニコしながら訊ねる。桜士はチラリと瞳を見る。瞳は暗い顔をしながら料理を見ていた。その態度は緊張しているのではないと誰が見てもわかる。

(この女性はこのお見合いに乗り気じゃないんだろうな。この父親に無理やり連れて来られたんだろう)

なら断るのも簡単だろうな、と桜士は安堵する。二人きりになった時に説明をすればすんなり納得してくれるだろう。お見合い恒例の「あとは若いお二人で」の時間を待とうと思っていた桜士だったが、薫がため息を吐きながら言う。

「九条くんは医師免許を持っているから、こんな傷物の娘でも「仕方ない」と言って貰ってくれるだろ?」

そう言った薫の目は嫌悪感に満ちており、その目で見つめられた瞳はビクッと肩を震わせる。桜士は思わず訊ねていた。

「傷物?」

「こいつの胸は一年前、偽物になってしまったんだ。そのせいで結婚はなくなった。もう三十だというのに!」
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