目に視えない私と目が見えない彼
どうすればいいのか考え込んでいると、美術室のドアが開く音がした。音がする方に視線を向けると来衣先輩が立っていた。


来衣先輩の表情はパァッと明るくなり、視線は私の方を向いている。
その、嬉しそうな表情は私に向けられている??
真っ直ぐ私のいる方向を見つめて、白杖のコツコツという金属音と共に足を進める。

「・・・・・・いた。・・・・やっと見つけた。探したんだよ?」

「・・・・なんだよっ、何の用だよ?」


来衣先輩は私に向かって言葉を投げかける。
答えたのは、もちろん私ではない。
大河先輩だ。


大河先輩に私の姿は視えないため、来衣先輩の言葉が自分に投げかけられたと思っている。

「・・・・・・探したんだよ。もう会えないかと思ったら、怖くて、怖くて。会えて良かった」


胸の奥がきゅっと疼いた。整った顔がくしゃっとなる笑顔は反則級に心臓に悪い。私のトキメキ数値は上昇する。

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