目に視えない私と目が見えない彼
心地よい風が頬をなでる。見上げた空は雲一つない青空で、この空を見るのも最後かと思うと、眺めていた瞳を逸らせなかった。

白杖とアスファルトの打撃音がコツコツと一定のリズムで響く。聞きなれた音に居心地の良さを感じていた。

「慣れたつもりでも白杖に集まる視線は感じるし、隣に未蘭がいると安心して歩ける」

肩を並べてゆっくりと歩いた。周りに人がいないときは堂々とお喋りをしながら、ゴールを決めずに歩いた。

時間はあっという間に過ぎるもので、空の様子が変わってきていた。夕焼けが顔を出してオレンジ色に染まっていく。

まるで、私が私でいられるカウントダウンのように感じた。

「来衣先輩、公園で話しませんか?」

提案したのは私だった。死後の世界にいつ呼び戻されるかわからない。ただ、その時間は近い。そう感じていた。
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