目に視えない私と目が見えない彼
「カーッカーッ」

鳴き声がうるさく聞こえてきて、空を見上げるとカラスの群れが私達のちょうど真上を飛び交っていた。


「これは・・・・・・、まずいな。来るぞ!!」

「なっ、なにが?」



・・・・・・来るって、なにが?!柊の言ってる意味が少しも理解できなくて慌てて戸惑っていた。


「———来た!!走って!手で掴むんだ!!」



俊は言葉を発したと同時に、私の背中を力強く押した。私は押された反動で、足が前に出る。

「手で掴むんだ!!」柊の言葉が頭の中に浮かんできて、気付くと手を高く伸ばしていた。



———ボトッ、

鈍い音と共に、何かが手のひらに落ちた感触がした。


手のひらには生ぬるい感触。・・・・・・嫌な予感しかしない。


見たくなかったけど、勇気を振り絞って、チラッと視線を手のひらに向けた。


ああ、やっぱり、カラスの糞だ。うわあ、・・・・・・最悪だ。


守護対象者の森本若菜さんの頭に落ちるはずだったカラスの糞は、今、私の手の中にある。

私が森本さんの危険を、救ったということだ。



「私達の仕事って・・・・・こういうこと?」


「そういうこと!」


柊は口角を上げて満面の笑みを浮かべる。
その笑顔とは反対に、私の心はげんなりだった。


守護霊代行の初任務を遂行できて嬉しいはずなのに、手の中に残るカラスの糞の温もりが、私を意気消沈させる。

生前、カラスの糞が落ちてきた人を見たことは何度もあったけど、自分に落ちたことはなかったな。

私にカラスの糞が落ちないように、守護霊が守ってくれてたのかな?・・・・・・ありがとう。



———って、
なんか、思ってた任務と違う!!
< 27 / 256 >

この作品をシェア

pagetop