目に視えない私と目が見えない彼
「・・・・・痛っ」
 


発せられた声と共に彼の大きな体は一瞬、私の視界から消えた。なにかにつまずいて、膝をついて転んでしまったようだ。


転んじゃった?彼は目が見えないかもしれないのに。大丈夫かな。

気付くと体は動いていて、私は自分の任務のことを忘れて急いで駆け寄った。


「大丈夫ですか?」

衝動的に話しかけてしまった。声を発した後にようやく気づいて、気が動転して、あたふたするしかできなかった。

人に話しかけて、存在がバレてはいけないのに思わず話しかけてしまった。

人に私の姿は視えないので、誰もいないところから声がしたら今日の対象者の若菜さんのように驚いてしまうだろう。


えーと、どうしよう。慌てている私の耳に届いたのは、予想をしていない言葉だった。
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