契約結婚のはずが、御曹司は一途な愛を抑えきれない
「誕生日に恋人に振られて、ワンワン泣いて、抱いてって迫られたからお前を抱いた、覚えてないのか」

嘘。

「すみません、ご迷惑をおかけして、私、帰ります」

ミクはベッドの周りに散らばっている服をかき集めて、バッグの中の財布を取り出した。

「飲み代払って頂いたんですよね、これ」

ミクはその男性にお札を差し出した。

「あ、大丈夫」

「でも、身も知らずの人に払ってもらうわけにはいきません」

「身も知らずの人はひどいな、昨夜身体を重ねた仲だよ」

ミクは顔が真っ赤になり、とにかくテーブルの上にお札を置いて、服を来て、
ホテルを飛び出した。

「まって、送っていくよ」

「大丈夫です、酔った勢いの一夜の過ちと思って忘れてください」

ミクは外に飛び出して、タクシーを拾って自宅に向かった。

その男性はベッドの側に落ちていた社員証を拾い上げた。

辰巳グループ総務部、橘花ミク。

俺の会社の社員だったのか。

辰巳グループ御曹司、月曜日より社長に就任する辰巳省吾だった。

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