幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
「いやー、良かったな!うまく進んで」
「ほんと!あの町の皆さんもいい人達ばかりだし、東条さんも良い楽団を紹介してくださったし」

うんうんと頷きつつ、瑛は腕時計に目を落とす。

「まだ3時か。朱里、ちょっとブラブラしてから帰らないか?飛行機、夜の便だしな」
「ほんと?!いいの?」
「ああ。お土産買いたいんだろう?」
「うん!」

まるで遠足のように、朱里はウキウキと行き先を考える。
瑛は黙ってついて行くことにした。

「やっほー!神戸に上陸!」

電車で40分程で神戸に到着した。

「海だー!あ、山もー!」

海と山が平行に続いていて、朱里は右と左をキョロキョロと見比べる。

「ねえ、山の上から海を見たら素敵じゃない?」
「そうだな。ロープウェイで上に上がるか」
「うん。やったー!」

子どものようにはしゃぐ朱里に、瑛は目を細める。

「そう言えばさ、小学校の遠足の時、朱里浮かれた挙句にお菓子地面にぶちまけただろ?」
「ぶっ!良く覚えてるねー、そんな昔のこと」
「だってお前、それまでウッキウキだったのに、お菓子落とした瞬間、この世の終わりみたいな顔して泣き始めてさ」
「そうだったねー。それでみんなから少しずつ分けてもらったんだっけ」
「そう。そしたらまたコロッとご機嫌になってさ」
「ふふ、だって、色んな種類のお菓子たくさんもらって、なにこれー?美味しそうーって」
「結局、自分の持って来たお菓子よりも豪華になってな」
「そうそう!結果オーライだね」

いつ以来だろう。
こんなふうに、二人で他愛もない昔の話で笑い合うのは。

朱里は綺麗な景色を眺めながら、嬉しさで胸がいっぱいになった。
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