幸せの見つけ方〜幼馴染は御曹司〜
第八章 コンサート
しばらくして、朱里達カルテットの二度目の本番がやってきた。

今回は直々に、瑛の父でもある桐生社長からの依頼で、また別のマンションでの演奏だった。

前回とは曲目や演出も少し変え、朱里達四人はこの日の為に練習を重ねてきた。

当たり前だが、今日朱里が演奏することを桐生一家は把握しており、最初から客席に座って聴いていた。

優もにこにこと楽しそうにしているのが目に入り、演奏しながら朱里も嬉しくなる。

そして、瑛の隣には聖美も座っていた。

客席の反応も良く大いに盛り上がり、たくさんの拍手を浴びて四人は深々とお辞儀をした。

「朱里さん!」

終演後、すぐに聖美が朱里に駆け寄ってきた。

「とっても素敵な演奏でした!」

そう言ってピンクのバラの大きな花束を渡してくれる。

「ええ?!私に?」

戸惑う朱里に、聖美は笑顔で頷く。

「もちろんです」
「こんなに綺麗なお花を…。ありがとうございます!」
「それと、こちらは皆様で召し上がってください」

今度は大きな高級洋菓子の紙袋を、奏達に差し出す。

「ええ?!俺達に?」
「はい。とても素晴らしい演奏をありがとうございました」

こ、こちらこそ、と三人は面食らう。

朱里は改めて皆に紹介した。

「こちらは、都築製薬のご令嬢の都築 聖美さんです」
「初めまして。都築 聖美と申します」

ええー?!と奏達は仰け反る。

「そしてお隣は、聖美さんのフィアンセの桐生 瑛さんです」
「初めまして。桐生 瑛です」

えええー?!と、三人はさらに仰け反った。

そうこうしているうちに、瑛の両親達も近づいてきた。

「皆さん、今日も素晴らしい演奏をありがとうございました」
「しゃ、社長!こちらこそ、お招き頂きありがとうございました」

四人で頭を下げる。

「いやー、今回も本当に楽しく聴かせて頂きました。客席の皆さんもとても感激していらっしゃいましたよ。是非、今後ともよろしくお願いしますね」
「はい!精進して参ります。またどうぞよろしくお願い致します」

奏が腰を折って丁寧に頭を下げると、瑛の父は嬉しそうに頷いた。

「あーちゃ!」

ふいに優の可愛い声が聞こえてきて、朱里はメロメロになる。

「優くーん!来てくれてありがとーう!」

朱里は雅に抱かれた優に頬ずりする。

最近少し言葉を覚え始めた優は、朱里のこともあーちゃと呼んでくれ、その度に朱里は骨抜きにされていた。

「朱里ちゃん、今日も輝いてたわよー。ヴァイオリン弾いてる時の朱里ちゃん、すっごくかっこいい!」
「えー、男前でした?」
「うん、そこらの男よりもよっぽど男前!」

お姉さん、それって…と朱里が眉間にシワを寄せると、皆はドッと笑う。

素敵な仲間達と演奏出来たこと、そして大切な人達に聴いてもらえたことに幸せを感じながら、朱里もとびきりの笑顔をみせた。
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