Good day !
「あ、ちょっと待ってろ」

ふいに大和が口調を変えて外に目をやると、運転席のドアから外に出て行った。

「うわー、すっげー風!」

ドア越しに聞こえてきた声に、恵真は思わずふふっと笑う。

大和は、飛ばされそうになりながら近くの自動販売機に行き、缶コーヒーを二本買って戻ってきた。

「はい、どうぞ」
「え、いいんですか?」
「もちろん。ささやかだが、今日のフライトに乾杯しよう」
「ふふ、はい」

恵真は大和から受け取ると、二人で缶を軽く合わせる。

「乾杯!ナイスフライト」
「お疲れ様でした。ナイスフライト」

微笑み合ってからコーヒーを飲む。

「しっかし今日の風はすごかったな」
「佐倉さんでもそう思いますか?」
「当たり前だろ?訓練ではよくあるけど、実機ではなかなかないよ」

でも…と、大和は言葉を続ける。

「みんながゴーアラ連発する中、一発で下りられるなんてラッキーだったな。お前、全然不運なんかじゃないぞ」
「え?」

思ってもみなかった言葉に、恵真は戸惑う。

「お前は風神でも、ミス・ハプニングでもない。幸運の女神だよ」

そう言って笑う大和に、恵真も思わず笑顔になる。

「なんだ、笑うと別人だな。お前フライト中、能面みたいだったぞ」
「ええ?!ほんとですか?」
「ああ。こんな感じ」

大和は、ぼーっと真顔になってみせる。

「嘘!そんなにひどい顔でした?」
「うん。っておい、今俺のことディスっただろ?」
「え、いえ!まさかそんな!」
「いーや、言ったぞ。ひどい顔って」
「あ、そ、それは確かに…」

ブハハ!と大和は面白そうに笑う。

「佐倉さんも、そんなふうに笑ったりするんですね」

恵真はほっとしたように呟く。

「え、お前、俺のことどういうふうに思ってたの?」
「うーん、完璧な…パーフェクトパイロット、かな」
「いやー、なんかそれ嫌だわ。パーフェクトヒューマンみたい」
「あはは!」

恵真は堪えきれずに笑い出す。

「ま、俺もお前も普通の人間ってことだよ。くしゃみもすれば笑いもする。マイクロバーストは起こせない。それでも飛行機の力を借りて空を飛ぶ。そんなパイロット人生も悪くないだろ?」
「はい」
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