Good day !【書籍化】
第六章 伊沢と恵真
「お、恵真。めちゃくちゃ久しぶりだな」
社員食堂でランチを食べていると、伊沢がそう声をかけてから向かい側に腰を下ろした。
「伊沢くん、お疲れ様。ほんとだね、えーっと、1か月ぶり?」
「あー、そうかも。おいおい、俺達つき合ってるはずじゃなかったのか?」
「あはは、そうだね」
思わず笑ったが、恵真はすぐに真剣な表情になる。
「伊沢くん、そのことなんだけどね。もう佐倉さんにはちゃんと伝わった訳だし、つき合ってるって噂、消した方がいいよね?」
「ん、そうか? 別に放っておけばいいんじゃない?」
「でも伊沢くんにも迷惑かけてるし…」
「別に俺はなんともないけど?」
「だってこのままだと伊沢くん、好きな子にアタック出来ないよ?」
「アタックって……。恵真、なんか妙に古臭いな」
それはいいから!と、恵真は顔を寄せる。
「それに伊沢くんのこと狙ってる女の子も、伊沢くんにアタック出来ないじゃない? そんなの可哀想だよ」
すると伊沢は、まじまじと恵真を見つめた。
「え、なに? アタックってまた変だった?」
「うん、変だった。それに恵真、本気で言ってんの? 俺のこと狙ってる女の子がいるって」
「当たり前だよ。伊沢くん、優しいしかっこいいし、パイロットの制服姿もすごく似合ってる。絶対狙ってる女の子いるよ」
そう言う恵真の予想に反して、伊沢は表情を曇らせる。
「伊沢くん? どうしたの?」
心配になって顔を覗き込むと、伊沢はキュッと口元を引き締めて恵真を見る。
「俺、恵真からそんなふうに言われると辛い」
「え、どうして? 私、なにか気にさわること言った?」
「ああ、気にさわった」
え……と恵真は絶句する。
伊沢からこんなふうにきっぱりと拒絶されたことなど、今まで一度もなかった。
「伊沢くん、あの、ごめんなさい。私、そんなつもりじゃなくて……」
「謝るな。恵真はなにも悪くないだろ?」
「ううん、だって、伊沢くんの気にさわること言っちゃったんだし」
「でもそれがどういう意味か、分かってないんだろ? なら、謝るな」
恵真はどうしていいか分からずに下を向く。
気を抜けば涙がこぼれそうだった。
はあ、と伊沢が小さくため息をつく。
「恵真、ごめん。今のは俺が悪かった。自分が思ってるほど、上手く気持ちのコントロールが出来なかった」
恵真はそっと視線を上げる。
伊沢は恵真に笑ってみせたが、どこか辛そうだった。
「あの、伊沢くん。私……」
口を開くが、なにを話していいか分からない。
「いいよ、なにも言うな。ほら、食事まだ途中だろ? 早く食べろ」
「うん……」
恵真は涙を堪えながら、味のしなくなったハヤシライスをひたすら口に運んだ。
社員食堂でランチを食べていると、伊沢がそう声をかけてから向かい側に腰を下ろした。
「伊沢くん、お疲れ様。ほんとだね、えーっと、1か月ぶり?」
「あー、そうかも。おいおい、俺達つき合ってるはずじゃなかったのか?」
「あはは、そうだね」
思わず笑ったが、恵真はすぐに真剣な表情になる。
「伊沢くん、そのことなんだけどね。もう佐倉さんにはちゃんと伝わった訳だし、つき合ってるって噂、消した方がいいよね?」
「ん、そうか? 別に放っておけばいいんじゃない?」
「でも伊沢くんにも迷惑かけてるし…」
「別に俺はなんともないけど?」
「だってこのままだと伊沢くん、好きな子にアタック出来ないよ?」
「アタックって……。恵真、なんか妙に古臭いな」
それはいいから!と、恵真は顔を寄せる。
「それに伊沢くんのこと狙ってる女の子も、伊沢くんにアタック出来ないじゃない? そんなの可哀想だよ」
すると伊沢は、まじまじと恵真を見つめた。
「え、なに? アタックってまた変だった?」
「うん、変だった。それに恵真、本気で言ってんの? 俺のこと狙ってる女の子がいるって」
「当たり前だよ。伊沢くん、優しいしかっこいいし、パイロットの制服姿もすごく似合ってる。絶対狙ってる女の子いるよ」
そう言う恵真の予想に反して、伊沢は表情を曇らせる。
「伊沢くん? どうしたの?」
心配になって顔を覗き込むと、伊沢はキュッと口元を引き締めて恵真を見る。
「俺、恵真からそんなふうに言われると辛い」
「え、どうして? 私、なにか気にさわること言った?」
「ああ、気にさわった」
え……と恵真は絶句する。
伊沢からこんなふうにきっぱりと拒絶されたことなど、今まで一度もなかった。
「伊沢くん、あの、ごめんなさい。私、そんなつもりじゃなくて……」
「謝るな。恵真はなにも悪くないだろ?」
「ううん、だって、伊沢くんの気にさわること言っちゃったんだし」
「でもそれがどういう意味か、分かってないんだろ? なら、謝るな」
恵真はどうしていいか分からずに下を向く。
気を抜けば涙がこぼれそうだった。
はあ、と伊沢が小さくため息をつく。
「恵真、ごめん。今のは俺が悪かった。自分が思ってるほど、上手く気持ちのコントロールが出来なかった」
恵真はそっと視線を上げる。
伊沢は恵真に笑ってみせたが、どこか辛そうだった。
「あの、伊沢くん。私……」
口を開くが、なにを話していいか分からない。
「いいよ、なにも言うな。ほら、食事まだ途中だろ? 早く食べろ」
「うん……」
恵真は涙を堪えながら、味のしなくなったハヤシライスをひたすら口に運んだ。