Good day !
着替えてから更衣室を出て、廊下の端で恵真を待つ間、大和はスマートフォンで地震の情報をチェックする。

(ん?停電してるエリアってこんなにあるのか。確かこの辺り、あいつのマンションだったな)

思い出しながら考えていると、パタパタと足音がして恵真が現れた。

「すみません、お待たせしました」
「いや。そんなに急がなくても良かったのに」
「いえ、大丈夫です」

ふう、と肩で息を整える恵真に、大和が言う。

「お前のマンション、停電してるみたいだぞ」
「えっ!そうなんですか?」
「ああ、あの辺り一帯停電中だ。いつ復旧するかも分からない。それに明日の朝の電車の状況もなんとも言えないしな。俺は明日に備えて今日はホテルに泊まろうと思う。お前もそうしたらどうだ?」

恵真は視線を外して少し考える。

「そうですね。停電中のマンションに帰ったら色々不自由ですし、明日のショーアップに遅れることがあってはいけませんし。私も今日はホテルに泊まります」
「よし。じゃあ空港ターミナルに隣接したホテルに行こう」
「はい」

二人で並んで国内線ターミナルを横切る。
今日の最終便はとっくに到着しており、いつもなら閑散とする時間だったが、今はまだ多くの人がベンチに座ったり、グランドスタッフに何か話したりしている。

「うわ、まだまだ大変そうですね」
「ああ。明日の始発便にも影響出そうだな」

ターミナルの端まで来ると、隣接するホテルのロビーに入った。

ここでもいつも以上に人が多くごった返していて、二人は驚く。

「考える事は皆同じか。二部屋取れるかな…。ちょっと待ってろ。バッグ頼む」
「はい」

恵真はソファの横で、自分と大和のフライトバッグを手にしばらく待つ。

大和はフロントでやり取りし、途中で少し何かを考えるように動きを止めてから頷いている。

やがて恵真のところに戻ってきた。

「お待たせ」
「いえ。部屋、空いてましたか?」
「ああ。二部屋取れたことは取れたんだけど…」

けど?と恵真が首をかしげる。

「部屋の鍵は一つなんだ」
「…はい?」
「んー、まあ、行けば分かる。とにかく行こう」
「は、はい」

恵真は大和に続いて歩き出した。
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