【SR】だるまさんが転んだ
死ぬかもしれない場所に向かう歌…タイトルは喉元まで出掛かったが、遂に思い出せず夜を明かした。


眠れずに過ごした夜にも関わらず、俊介の身体に疲労感は無かった。


今日で死んでしまうかもしれないと思うと、眠る時間が勿体なかった。


だが、俊介にこの国で何が出来る訳でもなく、唯一出来る事と言えば、帰国してから記事に出来るよう、足を使って近くを探索する事だけだった。


此処に住む人の生活の様子から息使い、その虚ろな目で何を見、何を感じているのか。


それを頭に叩き込んでいる内に、ヴェンと約束していた夕方はやってきた。


今日で死んでしまうかもしれないとしても、過去の事を思い出さなかったのは、チャオミンの無垢な瞳やヴェンのこの国を思う気持ちが、心の支えとなっているからだと俊介は思っていた。


事実、その通りだった。


この国に来て、二度目の夕空。


青を飲み込んでいくそれは、今日も皮肉なほどに綺麗だった。


昨日待ち合わせの約束を交わした枯れ落ちそうな木の下で、俊介は夕空に変わっていく空を見つめながら巻き煙草を吸っていた。
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