隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
そうか、好きな人がいるのに隠したままごまかそうとしている私の行動も、結婚はしたくないと言う優也さんと同じ。要は逃げているだけだ。

「とにかく僕には結婚の意思はないし、うちの両親を見て育ったせいか家庭を持ちたいとも思わない。ただ、僕がそう言っただけでは周囲は納得しないだろう。だから、桃さんにも僕との結婚は考えられないと答えてほしい。何なら僕のことを悪く言ってもらっても構わないから」
「そんなあ・・・」

以前優也さんも言っていた通り、丸星デパートより一条コンツェルンの方が立場は上だ。
優也さんの方からこの縁談を断るのは、色々とリスクを伴うことなのだろうと思う。
だからと言って私の方から断って、何かの拍子に隼人との関係が知れるのも困る。

「嫌な顔はされるだろうが、二人がそろって嫌だというものを無理強いはできないはずだ」
「そうね」

さすがにすんなりとはいかないだろうけれど、それ以外に方法はないだろう。
実際、優也さんも私も結婚を望んでいないんだから。

その夜、優也さんの本心を聞いた私は家まで送ってもらった。

こんな日には隼人の声が聞きたいなと思ったものの、異物混入騒動の事後処理に追われているのか連絡が来ることもなかった。
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