隠れお嬢様と敏腕上司の㊙恋愛事情
かけがえのない存在 Side隼人
ブブブ ブブブ
最近特に増えたスマホへの着信。
それも、相手はいつも同じ人物だ。

「もしもし」
『隼人さんですか、風見です』

ちょっとだけ辟易した気分で出た風見さんからの電話。
彼も仕事でかけている以上きちんと相手をしなければと思いながら、面倒くさいなあの思いが態度に出てしまう。

「先生の今夜の予定が1つキャンセルになりまして、できればお目にかかって今後のご相談をしたいとのことですが、いかがでしょうか?」

年齢の割に忙しく、いつも分刻みで動く風見さんの雇い主に今夜時間ができたから、一緒に食事をしようってことらしい。
本来ならこちらにも都合があるのでとお断りしたいところだが、俺の方にも話があって断ることもできない。

「わかりました」
「ホテルまでお迎えに上がりますが、7時でよろしいですか?」
「はい。地下駐車場へお願いします」
「承知しました、では後程」

はあー。
電話を切って、ため息が出た。

これは自分で決めたことと頭では理解しているんだが、やはり思いは複雑だ。
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