琥珀色の砂時計
「めのちゃん! ガンバレー!」

 それでもわたしは一度こはくを見上げ、一口パクリとしてみせた。同時に「おお~!」と歓声が上がる。そうだよね……わたしもこはくが初めてご飯を食べてくれたあの日、本当に本当に幸せだったよ。リクガメは喋れないのだもの。トコトコ歩いたり、ご飯を食べたり、無防備に眠ったり、寝起きに大きなあくびをしたり……そんなささやかな行動一つ一つに、随分感動させられたっけ。

 小さなギリシャリクガメに比べたら、ずっとずっと大きくなったケヅメリクガメのあなたには、もちろんそれなりに広いスペースを捧げたけれど。この狭い日本、ふるさとであるアフリカのサバンナのようには、あなたを自由にしてあげられなかった。

 そんな窮屈な世界で、身体に合わない気候で、こはくはわたしに懐いてくれたんだ……今度はわたしがあなたに寄り添う番。

 こはく、一緒にいてくれてありがとう。

 『めのう』って名付けてくれてありがとう。

 あなたにもう話し掛けてはあげられないけれど、今までこはくがくれた想い出の分、これからはわたしが想い出をあげる。

 だからこの『()』はもっともっと一緒に──

「めのちゃん、だーいすき!!」

 ──わたしも大好きだよ、こはく……。


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