新くんはファーストキスを奪いたい



 先ほど、鞠が失恋したばかりと知っておきながら、あんな揶揄うようなことをしてきた新。

 だから鞠の中で信用する心は既になく、何なら警戒心がより強まっていた。
 
 こんな気持ちのまま彼と同じ委員活動なんて絶対に無理だし、帰宅部になった方がマシだと考えるほどに新を苦手とした。

 身勝手ではあるが、自分の立候補の取り消しを願い出ようと鞠が決心したその時。



「えー! 新くんがやるなら私もやりたい!」
「私も! 複数いたっていいよね先生ー?」



 あんなに不人気だった美化委員の枠が、新の効果で一気に大人気委員と化した。

 やってくれる女子がこんなにいるなら、自分の辞退もそこまで咎められないだろう。
 むしろ辞退大歓迎の空気を察して、他の女子に美化委員を譲る気満々の鞠は笑顔で先生に目配せすると。



「うるさいうるさい! 早い者勝ちだ」
「えー! ケチー!」



 先生、その早い者勝ちした私は今、敗北感でいっぱいなのです。と訴えかけたが届くはずもなく。

 窓側の一番前席で項垂れる鞠は、先生に一喝された女子たちの突き刺すような視線を背中に感じながら。
 心の中で大きなため息と共に、しくしく泣いていた。

 そして、少しだけ横を向いて新の顔色を窺おうとしたのだが。
 本人は前を見据えたまま平然としていて、ますます腹立たしい。



(何で同時に挙手するかなー)



 それが新の策略とも知らず、今一番接しにくい人物と一年間の委員活動が決まった鞠。

 なるべく活動に専念して、新との接触は最低限にしようと計画を立てるも。
 それを許さないほどの強引な新であることに、この時はまだ気づいていなかった。


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