その断罪に異議あり! 断罪を阻止したらとんだとばっちりにあいました
突然の国王の登場に、会場はどよめいた。
「ああ、畏まらなくて良い」
皆がその場で礼を取って頭を下げようとするのを、国王が止めた。
「ち、父上・・なぜ・・学園長も」
「父上」
「ベルテ、アレッサンドロ。お前達は・・」
ベルテは父親である国王が来るだろうことはある程度予想していたが、アレッサンドロはまるで想像していなかっただけに、驚愕に満ちた表情を国王達に向けている。
「何故、それはそなたが一番良くわかっているのではないか、アレッサンドロ」
「ど、どういう・・・」
「デルペシュ」
「は!」
国王はアレッサンドロの問いにすぐには答えず、後ろを振り返る。
その後ろには、騎士服を着た赤髪の屈強な男性が控えていた。
「デルペシュ・・騎士団長」
アレッサンドロはその人物を見て、また顔を顰めた。
頬に傷のある彼はブライアン・デルペシュ。騎士団長であり王の懐刀だ。
平民出身だが、武芸に秀でそれを見込まれて貴族令嬢と結婚した。
実直で忠義に厚く、アレッサンドロの剣の師匠でもあるが、アレッサンドロは彼が苦手だった。
根がいい加減で努力という言葉の嫌いなアレッサンドロは、良く彼の鍛錬を仮病を使ってサボっていたのをベルテは知っている。
デルペシュは手に羊皮に包まれた何かを持って、アレッサンドロの前に突き出した。
「これは?」
「そなたが隠していた生徒会の帳簿だ」
「な!!!!」
驚いたアレッサンドロは、目が落ちるのではないかと思うくらい大きく見開く。
「それからそなたが今まで提出してきた課題。筆跡を調べたが、どれもそなたの筆跡とは似ていたが、別人が書いた物だった。ただのひとつも、そなたが書いた物はなかった。この意味がわかるか?」
「そ、それは」
アレッサンドロは言葉を詰まらせる。
それはアレッサンドロが提出した課題が、すべて他人が書いた物だと言っていた。
「へ、陛下。お会いできて光栄でございます。私はカトリーヌ・ブーレットと申します」
ただ一人カトリーヌを覗いては。彼女は突然の国王の来訪に、自己を売り込むチャンスとばかりに声をかけた。
いくら畏まるなという言葉があったとて、国王に許しも請わずいきなり挨拶をするのは、はっきり言って礼儀知らずと誹られても文句は言えない。
しかし、カトリーヌはそんな最低限の礼儀も弁えていなかった。
「先ほどの映像、余も影から確認した。それとこの帳簿と課題、これが事実なら由々しき事態だぞ」
国王はそんなカトリーヌのことを無視し、アレッサンドロを問い詰める。
カトリーヌは無視されたことに顔を顰めたが、さすがに国王に文句を言うのは思いとどまった。
「ご、誤解です父上、わ、私は」
「しかし、いかにそなたが悪事を働こうとその足らない頭で考えようと、そなただけでここまで出来るとは思えん」
「さようです」
国王の言葉を受け、次に前に出たのは学園長だった。
「が、学園長」
「実に残念です殿下。私が学園長の代に、学園内でこのような不正が行われていようとは」
学園長は心底遺憾だという風に頭を振った。
「な、何を・・学園長」
「もうわかっていらっしゃるでしょう。ハビエルです」
「ハ、ハビエル副学園長」
その名を聞いて、アレッサンドロはこれ以上ないくらい震え上がった。
「殿下が申請した生徒会運営費用の増額について、審査をしたのが副学園長だと言えば、おわかりですね。そして彼が命じて殿下の試験の点数改ざんも、身に覚えがありますね」
「く・・ベルテ、すべてお前の仕業か」
アレッサンドロはそれまでの威勢がどこへ行ったのか。悔しげにベルテを睨み付ける。
次から次へと明かされる事実に、もはや会場全体が驚きを忘れ、ただ呆然と見守っていた。
「自業自得です。自分の行った罪を潔くお認めください」
ベルテはアレッサンドロがシャンティエに向かって放った言葉を、そっくりそのまま告げた。
「既に副学園長は騎士団が取り押さえた。既に観念している」
「ど、どういうことですの、アレッサンドロ様、婚約破棄は? 私達はどうなるのです?」
「黙りなさい、ブーレット、そなたのことも、多くの者から告訴状が出ておる」
そんなカトリーヌを学園長が叱責する。びくりとカトリーヌが身を強張らせる。
「こ、告訴・・状?」
「さよう。覚えがないとは言わせんぞ。そなたがのせいで多くの者達が婚約破棄に至った」
「そ、そんなの、私のせいばかりでは・・」
「貴族同士の結婚は、家同士の利害や関係性を考慮し、執り行われるものだ。そなたが不用意に誘惑したことで、多くの男子生徒たちが道を踏み外し、それによって多くの女子生徒が不名誉を被った。それぞれの家門の長からそなたとそなたの父親に対し、法律で罰せよという訴状が出ている。よって学園側はアレッサンドロ殿下とブーレットを退学処分にすると決定した」
学園長の声が、会場に響き渡った。
「ああ、畏まらなくて良い」
皆がその場で礼を取って頭を下げようとするのを、国王が止めた。
「ち、父上・・なぜ・・学園長も」
「父上」
「ベルテ、アレッサンドロ。お前達は・・」
ベルテは父親である国王が来るだろうことはある程度予想していたが、アレッサンドロはまるで想像していなかっただけに、驚愕に満ちた表情を国王達に向けている。
「何故、それはそなたが一番良くわかっているのではないか、アレッサンドロ」
「ど、どういう・・・」
「デルペシュ」
「は!」
国王はアレッサンドロの問いにすぐには答えず、後ろを振り返る。
その後ろには、騎士服を着た赤髪の屈強な男性が控えていた。
「デルペシュ・・騎士団長」
アレッサンドロはその人物を見て、また顔を顰めた。
頬に傷のある彼はブライアン・デルペシュ。騎士団長であり王の懐刀だ。
平民出身だが、武芸に秀でそれを見込まれて貴族令嬢と結婚した。
実直で忠義に厚く、アレッサンドロの剣の師匠でもあるが、アレッサンドロは彼が苦手だった。
根がいい加減で努力という言葉の嫌いなアレッサンドロは、良く彼の鍛錬を仮病を使ってサボっていたのをベルテは知っている。
デルペシュは手に羊皮に包まれた何かを持って、アレッサンドロの前に突き出した。
「これは?」
「そなたが隠していた生徒会の帳簿だ」
「な!!!!」
驚いたアレッサンドロは、目が落ちるのではないかと思うくらい大きく見開く。
「それからそなたが今まで提出してきた課題。筆跡を調べたが、どれもそなたの筆跡とは似ていたが、別人が書いた物だった。ただのひとつも、そなたが書いた物はなかった。この意味がわかるか?」
「そ、それは」
アレッサンドロは言葉を詰まらせる。
それはアレッサンドロが提出した課題が、すべて他人が書いた物だと言っていた。
「へ、陛下。お会いできて光栄でございます。私はカトリーヌ・ブーレットと申します」
ただ一人カトリーヌを覗いては。彼女は突然の国王の来訪に、自己を売り込むチャンスとばかりに声をかけた。
いくら畏まるなという言葉があったとて、国王に許しも請わずいきなり挨拶をするのは、はっきり言って礼儀知らずと誹られても文句は言えない。
しかし、カトリーヌはそんな最低限の礼儀も弁えていなかった。
「先ほどの映像、余も影から確認した。それとこの帳簿と課題、これが事実なら由々しき事態だぞ」
国王はそんなカトリーヌのことを無視し、アレッサンドロを問い詰める。
カトリーヌは無視されたことに顔を顰めたが、さすがに国王に文句を言うのは思いとどまった。
「ご、誤解です父上、わ、私は」
「しかし、いかにそなたが悪事を働こうとその足らない頭で考えようと、そなただけでここまで出来るとは思えん」
「さようです」
国王の言葉を受け、次に前に出たのは学園長だった。
「が、学園長」
「実に残念です殿下。私が学園長の代に、学園内でこのような不正が行われていようとは」
学園長は心底遺憾だという風に頭を振った。
「な、何を・・学園長」
「もうわかっていらっしゃるでしょう。ハビエルです」
「ハ、ハビエル副学園長」
その名を聞いて、アレッサンドロはこれ以上ないくらい震え上がった。
「殿下が申請した生徒会運営費用の増額について、審査をしたのが副学園長だと言えば、おわかりですね。そして彼が命じて殿下の試験の点数改ざんも、身に覚えがありますね」
「く・・ベルテ、すべてお前の仕業か」
アレッサンドロはそれまでの威勢がどこへ行ったのか。悔しげにベルテを睨み付ける。
次から次へと明かされる事実に、もはや会場全体が驚きを忘れ、ただ呆然と見守っていた。
「自業自得です。自分の行った罪を潔くお認めください」
ベルテはアレッサンドロがシャンティエに向かって放った言葉を、そっくりそのまま告げた。
「既に副学園長は騎士団が取り押さえた。既に観念している」
「ど、どういうことですの、アレッサンドロ様、婚約破棄は? 私達はどうなるのです?」
「黙りなさい、ブーレット、そなたのことも、多くの者から告訴状が出ておる」
そんなカトリーヌを学園長が叱責する。びくりとカトリーヌが身を強張らせる。
「こ、告訴・・状?」
「さよう。覚えがないとは言わせんぞ。そなたがのせいで多くの者達が婚約破棄に至った」
「そ、そんなの、私のせいばかりでは・・」
「貴族同士の結婚は、家同士の利害や関係性を考慮し、執り行われるものだ。そなたが不用意に誘惑したことで、多くの男子生徒たちが道を踏み外し、それによって多くの女子生徒が不名誉を被った。それぞれの家門の長からそなたとそなたの父親に対し、法律で罰せよという訴状が出ている。よって学園側はアレッサンドロ殿下とブーレットを退学処分にすると決定した」
学園長の声が、会場に響き渡った。