全治三ヵ月
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翌朝、早くから店に向かい、帳簿の整理をした後、業者やお得意先への連絡を入れていく。

『悠くんも大変だなぁ。でも、命に別条がないならよかったよ』

「はい、本当に。しばらくご迷惑おかけしますが、また復活した際にはよろしくお願いいたします」

『智ちゃんも大変だね。何か力になれることあれば連絡して』

いつもワインを卸してもらっている富谷さんが労ってくれた。

他にもお世話になっている業者さん皆が優しい言葉をかけてくれる。

でも、本心はきっと頭を抱えているだろう。

うちの店からの発注がこの三ヵ月ストップするんだもの。

優しい言葉を掛けられる度に、申し訳ないのと不安とで泣きそうになる。

三か月後、この人たちはまた同じように関係を続けてくれるんだろうか。

いやいや、大丈夫だよね。

こんなネガティブな電話をかけ続けてると、気分までふさぎ込んじゃう。

壁にかかる時計に目をやると、もうお昼を過ぎていた。

……休憩しよ。

小さく息を吐き椅子から立ち上がると同時に店の電話が鳴った。

まさか、予約の電話?

店のインスタにはしばらく休むって昨晩のうちから入れといたんだけど。

「はい、カン・テです」

『カン・テさんですか?昨日大変ご迷惑をおかけしましたジャパン物流、物流本部長の島崎と申します』

ジャパン物流といえば、確か物流会社の大手だよね……って、もしや昨日の事故の?

『昨日、うちの従業員のトラックとご主人様のバイクが事故を起こしたと報告を受け、先程ご主人様の入院されている病院にお詫びにお伺いしました。その際奥様がお店にいらっしゃるとお聞きしたので』

「そうだったんですね。病院まで足を運んで頂いた上に私にまでお電話申し訳ありません」

入院治療費なんかは相手側が全額負担してくれるとは昨日悠から聞いていたけれど、その事故の相手がまさかそんな大きな会社とは思いもしなかった。

『いえ、昨日の事故は100%こちらの過失だと聞いています。ご主人が命に別条がないとお聞きして本当に安堵しましたが、奥様にも大変ご心配ご迷惑おかけしております。お詫びして済む問題ではないことは重々承知しております……』

本部長さんくらい偉い人でもこんなに低姿勢な人もいるんだ。

以前、タクシー相手に事故を起こした知人から、全てこちらの責任にされてケンモホロロな対応だったって聞いていたから驚く。

『実は、今お店の前にいるのですが』

え?!お店の前?

慌てて、店の窓から外の通りを見下ろすと、スーツを着た長身の男性がこちらに頭を下げていた。
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